山頂の民
〔解説〕
これは今から一万二千年ほど前の物語です。当時の地形は現在とは全く異なっていて、北海や地中海はまだ陸地で、ヨーロッパとアフリカはひと続きの広大な大陸になっています。この物語の主人公コナンが活躍するのは、ハイボリア人と呼ばれる民族が力をふるい、数多くの王国を築き上げている時代です。コナンは、ハイボリア諸国の北方にあるキンメリアという国から南方の文明国へと流れ歩いてきた野蛮人です。十五歳のころに南方からキンメリア国境付近に進出してきたハイボリア人と戦ったのが、彼が文明人と接した最初ですが、そのころすでに身長一八〇センチ、体重八〇キロほどの巨漢だったといいます。十七の年に彼は初めて文明国に姿を見せます。その時から彼の冒険に満ちた人生は始まり、持って生まれた屈強の体と野生の勘で、さまざまな自然・超自然の怪物と渡り合ってゆくことになるのです。最初の二年間、泥棒としての生活を送ったのち、彼は剣で金を得ることを覚え、二十四歳まで諸国で傭兵として働いて戦術を身につけてゆきます。(都筑道夫編『幻想英雄譚 魔女の誕生』
掲載のさとうによる解題より引用)
キンメリアのコナンは、ロバート・E・ハワード(一九〇六〜一九三六)によって生み出されたヒーローで、ハワードの死後、さまざまな作家によってパスティーシュが書かれましたが、「復讐鬼コナン」でその先陣を切ったのが、ここに紹介する作品の作者ビョルン・ニューベリイです。このエピソードはコナンがツランの国境警備隊で傭兵として働いていたときの物語で、コナンの推定年齢は二十一歳です。
コナン・シリーズはハヤカワ文庫と創元推理文庫から翻訳が出ています。ハヤカワ文庫は品切れですが、創元推理文庫では、中村融さんが旧版を大幅に改訂した《新訂版コナン全集(全六巻)》が出ています。
コナンはアーノルド・シュワルツェネッガー主演で映画化され(「コナン・ザ・グレート」「キング・オブ・デストロイヤー コナンPART2」)、その後、ラルフ・モーラー主演でテレビドラマにもなっています。
作者ロバート・E・ハワードの伝記も映画化され(「草の上の月」)、あの「シカゴ」や「ブリジット・ジョーンズの日記」のレニー・ゼルウィガーが恋人役を演じています。
〔作者について〕
作者のビョルン・ニューベリイはスウェーデン出身のアマチュア作家です。彼はロバート・E・ハワードが生み出したコナン・シリーズの大ファンで、自らもコナンのパスティーシュを書き上げました。これに作家のL・スプレイグ・ディ・キャンプが手を入れ、FANTASTIC UNIVERSE SCIENCE FICTION誌の一九五七年九月号に、CONAN THE VICTORIOUS と題して掲載されました。この中篇にディ・キャンプが一章と六章以降を書き加え、同年、GNOME PRESS社からTHE RETURN OF CONAN としてハードカバーで出版されました。さらに、一九六八年にはLANCER社からペーパーバックのCONAN THE AVENGER として出版されました。日本では『復讐鬼コナン』として、ハヤカワSF文庫で一九七一年に団精二さんの訳で出ています。今回訳出した「山頂の民」は、ハンス・ステファン・サンテッソン編の二冊目のヒロイック・ファンタジー・アンソロジーTHE MIGHTY SWORDSMEN ではじめて発表されたものです。その後、これもディ・キャンプが文章に手を加えて(ニューベリイの母国語は英語ではありません)、BANTAM社版コナン・シリーズの第一巻CONAN THE SWORDSMAN に収録されました。
〔収載書籍〕
〔原作〕
原題:The People of the Summit 作者:Björn Nyberg 初出:The Mighty Swordsmen, ed. Hans Stefan Santesson(Lancer, 1970) 再録:Conan the Swordsman, L. Sprague de Camp, Lin Carter, and Björn Nyberg(Bantam, 1978) (rewritten by L. Sprague de Camp)