冒険児クロンカイト

【口上】

ポール・アンダースン(一九二六〜二〇〇一)はSFの名作を数多く残していますが、ファンタジー作品もたくさん手がけていて、次のような作品があります(*印は未訳)。
『折れた魔剣』(一九五四)
『魔界の紋章』(一九六一)
『大魔王作戦』(一九七一)
「吟遊詩人ヴァラの剛胆」(一九五七)
Hrolf Kraki's Saga(一九七三)*
A Midsummer Tempest(一九七四)*
The Merman's Children(一九七九)*
The Demon of Scattery(一九七九)*
    ……Mildred Downey Broxonと共作
ここに紹介する「冒険児クロンカイト」(一九五六)は、そうしたファンタジーのサブジャンルであるヒロイック・ファンタジーを、彼独自のユーモア・センスで料理したパロディ作品の傑作です。もちろん下敷きになっているのはロバート・E・ハワードの《コナン》シリーズ。のちにBantam社が現代の作家による新《コナン》シリーズの刊行を始めたとき、アンダースン自身も第六巻Conan the Rebel(一九八〇)を書いています。

わたしが『荒獅子コナン』(ハヤカワ文庫、一九七三)を翻訳していたことから、『別冊奇想天外bR ドタバタSF大全集』(一九七七)の作品選定をしていた翻訳家の浅倉久志さんから声がかかり、この「冒険児クロンカイト」の翻訳を担当させていただくことになりました。とても感謝しています。その後、講談社文庫から浅倉久志編で『世界ユーモアSF傑作選』が出るときにも、その第二巻に拙訳でこの作品を入れていただきました。あれから三十八年たち、この傑作を埋もれさせておくのは惜しいと思い、ここに再掲載することにしました。ファンタジー名手の傑作パロディをご堪能ください。

なお、本文巻頭の「解説」は、雑誌掲載時に編集者が執筆したと思われるパロディ解説で、作品名・作家名・雑誌名・出版社名がみな実在の名前のもじりになっています。《コナン》ファンならニヤニヤ笑って楽しむことができるでしょう。

〔翻訳掲載履歴〕

別冊奇想天外bR ドタバタSF大全集 (一九七七年八月十五日)
世界ユーモアSF傑作選2(講談社文庫)(一九八〇年四月十五日)

〔掲載雑誌・書籍〕


〔お願い〕

リンクは自由に張っていただいてけっこうです。転載や再配布はご遠慮ください。

〔原作〕

原題:THE BARBARIAN
作者:Poul Anderson
初出:The Magazine of Fantasy and Science Fiction (May, 1956)
再録:Fantasy (Tor, 1981)
   The Armies of Elfland (Tor, 1992)

 本文   RETURN