【エッセイ】
ジョージ・ハリスンはBBCのアリスを観たか

さとう@Babelkund

ジョナサン・ミラー監督のテレビドラマAlice in Wonderland は、一九六六年十二月二十八日の午後九時五分からBBCで放送された。アリス役は当時十四歳のアン=マリー・メリック。
話はその二か月前の十月二十五日にさかのぼる。その日、ロンドン・ヒースロー空港に到着したのが、世界的なシタール奏者のラヴィ・シャンカル。彼はBBCの招きで訪英している。その時、空港で出迎えたのが、インドでシャンカルにシタールの指導を受けていたザ・ビートルズのジョージ・ハリスンだった。空港ロビーでの記者会見でシャンカルは「ジョージのシタールは着実に進歩している」と語ったという(『ビートルズ事典』立風書房、一九七四)。シャンカルがこのテレビドラマの音楽を担当し、自らもシタールを演奏しているが、この訪英は事前打ち合わせだったのかった、それともこの滞在期間中に録音まですませたかはさだかでない。シャンカルの録音風景はこの作品のDVDに収録されている。
その年の暮れに放送されたテレビドラマAlice in Wonderland をジョージ・ハリスンはリアルタイムで観ただろうか。一九六六年といえば、ザ・ビートルズの絶頂期であるが、八月にはアルバム「リボルバー」を出し、アメリカ公演も終えていたので、比較的時間に余裕のある頃だった。シタールの恩師であるシャンカルが音楽を担当したドラマはきっと観たに違いない。その感想は残っていないのだろうか。
ジョン・レノン&ポール・マッカートニーが『アリス』をモチーフにした曲を多く作っており、また一九六七年に出たアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のジャケットに載せた数十名の著名人の合成写真の中にルイス・キャロルも入れたことはよく知られているが、ジョージ・ハリスンの『アリス』に対する関心については知られていない。
なお、一九八五年に米国で制作されたナタリー・グレゴリー主演のドラマAlice in Wonderland にはリンゴ・スターが偽ウミガメ役で出演している。

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